歯磨き粉が悪い

歯磨き粉に含まれる成分が気になってネットで検索してみた時に、下記のような文章を目にする機会がありますよね。

  • 「歯磨き粉の成分は危険」
  • 「歯磨き粉は体に悪いから使わない方が良い」

中には「発がん性がある」といったキーワードもあり、不安になってしまった方も多いはずです。
そこでこの記事では、体に悪いと噂されている歯磨き粉の成分が本当に危険なのかを、厚生労働省などを始めとする公的機関が公表しているデータを元に検証してみました。

ぜひ、参考にしてみてください。

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市販の歯磨き粉で体に悪いと噂されている代表的な成分

市販の歯磨き粉で「体に悪い」と噂されている代表的な成分は、以下通りです。

成分名 正式名称
発泡剤 ラウリル硫酸ナトリウム(Na)
フッ素 フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム
湿潤剤 プロピレングリコール
香味料 サッカリンナトリウム
研磨剤 リン酸カルシウム、酸化アルミニウム

こういった多数の化学物質(成分)が有害だと噂されていると、薬局やスーパーなどで買える市販の歯磨き粉を口に入れるのが怖くなりますよね。
しかし、中には化学物質の危険性を過剰に強調して、他商品等の購入を誘導させる悪徳商法が存在します。

本当に自分の体に悪い物なのかを判断するためには、噂に振り回されず科学的根拠に基づいたデータ(一次情報)を確認する必要があるでしょう。
それでは次に、それぞれの成分の安全・危険性について、具体的にご紹介していきます。

ラウリル硫酸ナトリウム配合の歯磨き粉は体に悪い?

歯磨き粉の発泡剤として使用される「ラウリル硫酸ナトリウム」は、以下のように体に悪い作用が働くと噂されている成分です。

【ラウリル硫酸ナトリウムが体に悪いとされる噂の内容】

  • 肝臓・子宮・目の裏に蓄積される
  • 味覚障害になる
  • 若年性白内障になる
  • 口の中の清掃状態が余計悪化する
  • 心臓に15秒で届く

ただし、これらの噂は「疑われている」「考えられている」といった文言で締めくくられており、危険性を示す科学的根拠は特にありませんでした。
また、日本家政学会が発行している書籍では、ラウリル硫酸ナトリウムを含む各界面活性剤の毒性について以下のように否定されています。

各種界面活性剤は,経口投与は勿論の事,経皮投与,皮下投与,静注投与等での毒性試験が行われている.そして,経皮吸収量はわずかであって,体内に蓄積する事もなく,人の健康に悪影響を及ぼすとは考えられない

日本家政学会誌 Vol. 61 No. 8 511 ~ 516(2010)/(2) 毒性を示す根拠の不足より一部引用

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej/61/8/61_511/_pdf

フッ素配合の歯磨き粉は体に悪い?

虫歯予防に有効な成分として歯磨き粉に配合される「フッ素」は、以下のように体に悪い作用が働くと噂されている成分です。

【フッ素が体に悪いとされる噂の内容】

  • 歯が削れやすくなる
  • 免疫機能や神経の働きにダメージを与える
  • 甲状腺などの内分泌系にも影響を与える
  • 発ガン促進作用がある

ただし、これらの噂についてもよく読んでみると「可能性がある」「指摘もある」など不確かな文言で締めくくられており、危険性を示す科学的根拠は見つかりませんでした。
また、厚生労働省が運営するe‐ヘルスネットでも、以下のようにフッ素の有効性や安全性について記載されています。

半世紀以上にわたるフッ化物応用の有効性・安全性に関する研究結果に基づき専門機関であるWHO(世界保健機関)やFDI(世界歯科連盟)なども利用を推奨し、世界各国に実施を勧告しています。

e‐ヘルスネット/フッ化物利用(概論)より一部引用
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-006.html

プロピレングリコールなどの歯磨き粉の湿潤剤は体に悪い?

歯磨き粉の湿潤剤として使用される「プロピレングリコール」などは、以下のように体に悪い作用が働くと噂されている成分です。

【プロピレングリコールなどの湿潤剤が体に悪いとされる噂の内容】

  • 中枢神経系に悪影響を及ぼす
  • 腎不全や肝機能障害などの危険性を増加させる
  • 他の発がん物質を促進させる作用がある

ただし、やはりこれらの噂も歯磨き粉の危険性を示す科学的根拠は特にありませんでした。
また、厚生労働省に委託された一般財団法人食品薬品安全センターでは、プロピレングリコールの発がんを促進させる作用について以下のように否定されています。

プロピレングリコールは in vitroでの発がんプロモーション作用を有しない事が示唆された。

プロピレングリコールのBhas 42 細胞を用いる形質転換試験(プロモーション試験)
/結論より一部引用

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000117904.pdf

※in vitro…「試験管内で(の)」という意味
※発がんプロモーション…他の発がん物質による発がん作用を促進する作用

歯磨き粉の香味料のサッカリンナトリウムは体に悪い?

歯磨き粉の香味料として使用される「サッカリンナトリウム」は、発がん性があると噂されている成分です。
ただし、やはりサッカリンナトリウムについての噂も憶測の域を出ず、危険性を示す科学的根拠は特にありませんでした。

また、食品安全委員会添加物専門調査会では、サッカリンカルシウムの発がん性について以下のように否定されています。

1975 年 4 月の同合同部会において、JECFA による評価及びわが国において実施されたラットの長期毒性研究報告などからサッカリンの膀胱に対する発がん性は否定され ADI は 5 mg/kg bw と評価された。

サッカリンカルシウム添加物評価書/(1)わが国における評価より一部引用
http://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20070928te1&fileId=105

※ADI…一日摂取許容量(一生涯毎日摂取しても健康への悪影響がないとされる一
日当たりの摂取量の事)

歯磨き粉の研磨剤リン酸カルシウムなどは体に悪い?

歯磨き粉の研磨剤として使用される「リン酸カルシウム」や「酸化アルミニウム」などは、以下のように体に悪い作用が働くと噂されている成分です。

【歯磨き粉の研磨剤が体に悪いとされる噂の内容】

  • リン酸カルシウムは歯のエナメル質を傷付ける
  • 酸化アルミニウムは、アルツハイマー・記憶障害・味覚障害など

ただし、リン酸カルシウムが歯のエナメル質を傷付けるという内容は、「量」や「濃度」が多い・高い場合に限定されている噂が多く、科学的根拠もありませんでした。
また、水酸化アルミニウムについても歯磨き粉の研磨剤に限定した資料はないものの、厚生労働省でアルミニウムの毒性について以下のように記載していました。

人が一生涯摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される暫定的な許容量(暫定耐容週間摂取量)として、体重1kg、一週間当たり、2mgという値を設定しています。
なお、一時期、アルツハイマー病とアルミニウムの関係があるといった情報もありましたが、現在は、この因果関係を証明する根拠はないとされています。

アルミニウムに関する情報/2.アルミニウムの毒性より一部引用
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/aluminium/index.html

体に悪いとされる歯磨き粉よりも天然成分の物を選ぶべきか

体に悪いとされる歯磨き粉よりも天然成分の物を選ぶべきか

基本的に日本で販売されている歯磨き粉は、厚生労働省の承認を得た安全性の高い商品です。
一部危険だとされる成分も、人体に影響のない分量や濃度に調整して配合されているので、メーカー規定量を守って使えば体に害は起きにくいと考えられます。

そのため、「化学成分だから体に悪い」や「天然成分だから安心」といった視点で、歯磨き粉を選ぶ必要はないでしょう。
それよりも、歯磨き粉の成分は体に悪いという不確かな情報で不安を煽り、他商品への購入を誘導する悪徳商法に引っかからないよう気を付けてくださいね。

歯磨き粉は体に悪い?のまとめ

歯磨き粉は体に悪い?のまとめ

この記事でご紹介した歯磨き粉の成分は、ネット上などで「体に悪い」といった噂が流されています。
しかし、実際の噂の内容は科学的根拠に乏しく、公的機関で公表されているデータとは真逆の内容が掲載されている場合もあるので気をつけましょう。

あなたの化学物質への不安を「体に悪い」という噂で煽り、他商品へ誘導させる悪徳商法の可能性もあります。
基本的に日本で販売されている歯磨き粉は、厚生労働省の承認を得て安全性が確認されている商品です。

神経質になり過ぎずに、本当の意味で虫歯や歯周病予防などの歯を磨く際に役立つ歯磨き粉選びをしてくださいね。

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